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2025年10月15日 11時15分

アリックスパートナーズ、「2025年版 トップ100サプライヤー」を発表

グローバル・コンサルティング・ファームのアリックスパートナーズ(本社:米国ニューヨーク、日本:東京都千代田区、代表:植地卓郎)は、世界の自動車サプライヤーを対象とした「2025年版トップ100サプライヤー調査」を発表しました。
東京, 2025年10月15日 - (JCN Newswire) - グローバル・コンサルティング・ファームのアリックスパートナーズ(本社:米国ニューヨーク、日本:東京都千代田区、代表:植地卓郎)は、世界の自動車サプライヤーを対象とした「2025年版トップ100サプライヤー調査」(以下、本調査)を発表しました。今回の調査では、多くのサプライヤー企業が前年並みの利益率を維持できたものの、電気自動車(EV)等の需要減を背景に売上高が大幅に減少したことが明らかになりました。特に日本、北米、欧州で下押し圧力が強まるなか、中国の伸長が目立つ結果となっています。

本調査は、アリックスパートナーズが2024年に買収したドイツの自動車専門コンサルティング会社であるベリルズ(Berylls)が2019年より実施しているもので、世界の自動車サプライヤーのトップ100社を対象に自動車部門の財務や事業経営、グローバル戦略など広範囲にわたり分析しています。

主なポイントは以下の通りです。 

世界の自動車サプライヤー業界は短期間の回復局面を経て再び守勢に
生産台数の減少とOEMへの圧力増大でサプライヤーの良好な環境は終焉
減収トレンドが続くも利益率は比較的安定
日独サプライヤーに対する圧力が大幅に高まる一方、勝者は中国やアジア諸国から出現
バッテリーと半導体メーカーは厳しい状況に
サプライヤーは自動車以外の新たなターゲット分野を模索中
本調査によると、世界の大手自動車サプライヤー100社の売上高は、2024年の1兆1,350億ユーロから4.6%減少し、1兆8,500億ユーロにとどまりました。これは、コロナ終息以降3年間続いた拡大基調が突然終焉したことを物語っています。

2年前、サプライヤー業界は、特に北米と欧州における新車需要の増加を背景に盛り上がっていました。しかし、2024年になるとOEMの売上高は1兆7,300億ユーロと、前年の1兆7,700億ユーロから減少に転じました。EV需要が予測を下回ったことが主な要因で、サプライチェーン全体に悪影響を及ぼしました。その結果、特にバッテリーメーカーは、これまで長年にわたり業界をけん引した立役者であり、最も高い成長率を誇ってきましたが、最大41.5%の大幅な売上減に見舞われました。半導体メーカーも常に上位にランクインしていましたが、昨年は業績も大幅に低下する結果となりました。

市場環境は非常に厳しかったにもかかわらず、トップ100企業の対売上高利益率は前年比並みの5.8%(2023年は5.9%)を維持しました。これは、サプライヤー企業が実施した様々なコスト削減策やリストラ策が功を奏したとみています。

欧州勢がとりわけ苦戦

2024年の世界の自動車生産台数は2.2%減となりました。そのうち、欧州の減少幅が5%と大きく、生産台数もパンデミック前の水準に戻っています。自動車の需要が減退したことにより、サプライヤーの生産能力が十分に活用されないという状況に陥っています。ドイツの工場の平均稼働率は2023年の85%から68%と大幅に低下、調査結果からもサプライヤーが直接的な影響を受けていることがわかります。例えば、トップ100にランクインした欧州のサプライヤー34社のうち27社で前年比減収、イタリアでも3社のうち2社が減収となりました。米国企業では16社のうち10社、 日本企業でも22社のうち20社が悪影響を受けました。

世界的にみると、自動車を主産業とする国にあるサプライヤーが対応に苦戦していることが明らかです。特に日本、米国、ドイツの3カ国のサプライヤーは、2019年から2024年の間で最も大きな減収を記録、日本企業5社、米国とドイツそれぞれの企業3社がランク外となりました。現在、このカットラインは33億7,000万ユーロとなっています。

ドイツのGDPは、2019年以降19%拡大しましたが、同国のサプライヤーの累積売上高の伸びはわずか8%でした。この差から、グローバルな競争激化の中で存在感を発揮してきたドイツのサプライヤーの地位が低下していることが明らかです。

日本は、世界と比較してもより深刻な状況に立たされています。日本の名目GDPは、2019年から2024年の間に20%減少しており、本調査では、トップ100社にランクインする日本のサプライヤーの売上高シェアは7%減少しており、経済の停滞と構造的な課題が、日本のサプライヤー業界に甚大な影響を及ぼしていることがわかります。

一方、日本の半導体メーカーのルネサス・エレクトロニクスが、利益率において首位という結果になっています。2024年の利益率は31.7%と前年に比べやや落ちましたが、2位で同業の独インフィニオン・テクノロジーよりも約10%ポイント高い水準を維持しています。更に、トップ10では、6位にTOYO TIRE、8位に横浜ゴムがランクインしました。また、デンソーやアイシンといった幅広い部品領域を手掛けるサプライヤーは複数部品の組み合わせのみならず、ソフトウェア開発を強化し、ハードとソフトを組み合わせたシステムを強化することで利益を確保しランキングを維持しています。

米国は経済好調も、サプライヤー業界は出遅れ

米国のGDPは、2019年から2024年の5年間で35%も増加しています。しかし、自動車サプライヤーはこの波に乗ることができず、同期間の売上高のシェアは15 %の増加にとどまりました。このようなギャップが生じる背景について、多くの国で自動車産業がもはや経済の推進力として機能していないことが、本調査によって示される結果になりました。また、特にアジアのライバル国との国際競争の激化など、構造的な問題も要因として挙げられます。

一方、サプライヤー業界が好調な国では、米国とは異なる状況が浮かび上がっています。韓国、中国、フランス、アイルランド、スウェーデン、スペイン、インド、スイス、オランダといった国々では、2019年から2024年の間に、トップ100社のサプライヤーの売上高がGDPを上回るスピードで拡大しています。本調査では、これらの国々では成長著しいハイテク分野への特化や、イノベーションとグローバル化を推進する産業政策を推進しており、サプライヤーはこうした政策の恩恵を受けていると指摘しています。

中国の状況は際立っています。2019年から2023年の期間では、世界のトップ100ランキングに中国のサプライヤーは3社しか含まれていませんでしたが、 2024年だけでも4社が新たに加わりました。コックピット電子機器とインフォテインメントシステムなどを手掛ける中国・恵州のHuizhou Desay 、 騒音・振動・ハーシュネス対策のシャシー(車体)やダンピングコンポーネントを得意とするネイハ・トゥオプー・グループ(寧波拓普集団)、自動車分野でコネクティビティおよびソフトウェアソリューションを展開するファーウェイ、自動車の内装および装飾部品を製造するNBHXです。

これら新規参入企業の活躍により、中国のトップ100サプライヤーは2019年から2024年の間に売上高が139%も増加、国のGDP成長率の27%を大きく上回っています。このことは、世界規模で中国企業の影響力が拡大していることを示しています。また、多くの中国サプライヤーが従来型の部品の製造を行い、トップ 100入りを果たしている、または継続的にランクインしていることも明らかになっています。

総じて、自動車生産の減少と経済環境の低迷が、世界のサプライヤー業界、特に日本や欧州の自動車大国において逆風になっていることがわかります。日本とドイツの両国は、依然として上位2位を占めているものの、中国のサプライヤーとの差は急速に縮まっていると言えます。

欧州の生産者価格が再び競争力を高める

サプライヤーが支払う生産者価格にはポジティブな傾向がみられます。ドイツ、米国、中国では、電力、天然ガス、鉄鋼、アルミニウムなどの主要生産項目の価格が大幅な下落傾向にあります。これにより、多くのサプライヤーのコスト構造が短期的に緩和されています。特に米国での天然ガス価格の下落、ドイツでの電気と非金属の値下がりが顕著です。

一方で、このコスト動向にはマイナス面もあります。特に中国は生産拠点として大きな恩恵を受けており、有利なコスト構造を活かして世界市場で競争力を高めています。価格競争は、特にエレクトロモビリティとバッテリー技術の分野でさらに激化しており、欧州サプライヤーへの圧力が一層強まっています。

厳しい環境と市場の停滞を考慮して、多くのサプライヤーは戦略的に多角化することに注力しています。 トップ100社のサプライヤーの自動車向け以外の売上高の割合は2024年には17.5%に上昇しています。

注力分野は、空調技術や産業オートメーション、ロボット工学、医療技術、サステナブル建設技術などです。こうした分野向けのビジネスを拡大する場合、その多くが買収を通じて達成されていることも明らかになっています。

本調査結果からも、サプライヤーは、従来の自動車依存から脱却し自立することを望んでおり、またそうする必要があることは明白です。生産量の変動に加え、技術の道筋が不透明な環境下では、多角化によってレジリエンスが生まれるとみています。

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