2012年06月07日 10時41分
大塚製薬株式会社

大塚製薬 : ニューイングランド ・ ジャーナル ・ オブ ・ メディシン誌 多剤耐性結核に対する抗結核薬 「 デラマニド 」 の試験結果掲載

-- 後期臨床第II相試験において、多剤耐性結核の標準治療に「デラマニド」を上乗せで服用した群では、同様にプラセボを上乗せした群に比べ、2カ月後の結核菌の陰性化率が53%向上
-- 抗レトロウイルス薬を服用しているHIV感染症合併症例を含む多剤耐性結核を対象とした臨床第III相試験を国際共同治験として実施中
-- 結核は過去、約半世紀近くにわたり新しい薬剤が生まれていない重要な公衆衛生上の課題

東京--(BUSINESS WIRE)--(ビジネスワイヤ)-- 大塚製薬株式会社(本社:東京都、代表取締役社長:岩本太郎)は、多剤耐性結核の治療薬として開発を進めている新規抗結核薬「デラマニド」(一般名、開発コードはOPC-67683)の有効性および安全性を評価した後期臨床第II相試験の結果が、ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン誌に掲載されましたのでお知らせします。(URL: http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1112433)

今回、論文に掲載された試験は、「デラマニド」の有効性、安全性、忍容性を評価するためにプラセボ対照二重盲検比較試験として行われた後期臨床第II相試験です。世界9カ国の17の医療機関で実施されました。本試験では、世界保健機構(WHO)の治療ガイドラインで推奨されている多剤耐性結核の標準治療に「デラマニド」あるいはプラセボを上乗せで服用した被験者群間で比較を行っています。その結果、プラセボを上乗せで服用した患者群に比べ、「デラマニド」100mgを1日2回上乗せで服用した患者群で、喀痰培養による陰性化率が53%向上しました。

結核の治療に使われる薬剤に耐性のある菌の出現により、多剤耐性結核は、過去20年以上にわたり、公衆衛生上の重大な脅威となってきました。The WHO Global Plan to Stop TB 2011-2015*1は、多剤耐性結核を含む結核の治療には、従来とは異なる革新的な作用メカニズムをもつ治療薬の開発が急務であるとしています。結核の中でも、多剤耐性結核には、通常の結核と比べ、治療成果が低く、死亡率が高いという問題があります。
*1:  The WHO Global Plan to Stop TB 2011-2015:  結核撲滅のために必要な行動や資源を包括的に評価し、世界の結核の問題にインパクトをもたらすためのグローバル・プラン

当社が開発を進める「デラマニド」は、ニトロ-ジヒドロ-イミダゾオキサゾールに分類され、結核菌の細胞壁を構成するミコール酸の生成を阻害することで効果を示す、新しい作用メカニズムを有する化合物です。1963年以来、結核の新しい治療薬は発売されていないのが現状です。

大塚製薬 専務執行役員 抗結核グローバルプロジェクトリーダー  吉武益広は、「大塚製薬は、30年以上にわたり最重要プロジェクトのひとつとして、新しい抗結核薬の開発に取り組んできました。その結果、当社は結核分野の研究開発に対し、世界で最も投資を行っている企業となりました。短期間で安全、そして簡便な治療法の確立は、多剤耐性結核を抱える患者さんにとって、緊急性の高い課題であり、我々はこの願いに応えていきたいと考えています。今回の研究成果は、結核に関わる多くの方々にとって大きな一歩であり、過去約半世紀近くにわたり、新薬が生まれていない結核の治療に、『デラマニド』を届けるための大きな支えとなります。」と述べています。

試験デザイン

「デラマニド」の後期臨床第II相試験は、世界9カ国から17の医療機関が参加する、プラセボ対照二重盲検比較試験として実施されました。本試験では、「デラマニド」の有効性、安全性、忍容性、薬物動態を評価する目的で、多剤耐性結核の既存の標準治療に「デラマニド」の100mgあるいは200mgを1日2回上乗せで服用した群、およびプラセボを上乗せで服用した群(以下、プラセボ群)を比較しています。多剤耐性結核の標準治療は、WHOが推奨する治療法に基づいています。
本試験において、被験者は8週間にわたり、安全面でのモニタリング、および喀痰培養による評価を行うため、入院下での治療を受けています。本試験では、試験開始から2カ月後の喀痰培養の結果が陰性となっていた場合を、治療の成功と定めています。2カ月後の時点から5週連続して喀痰培養による評価を行い、5回連続で陰性を確認できた被験者のみを、陰性化率の計算に組み入れています。喀痰は、MGIT法*2および固形培地により培養しています。
試験には、多剤耐性結核が疑われる18~64歳の患者さん481名が登録され、うち402名が、試験開始時の喀痰培養の結果、陽性であることが確認され、有効性の解析に含まれています。主要評価項目としては、上記の培養方法のうち、より感度の高いMGIT法を用い、2カ月後に陰性化を達成した被験者の割合を評価しています。副次評価項目として、陰性化までの時間を含む、複数の項目について評価を行っています。
*2: MGIT法: Mycobacteria Growth Indicator Tube法(液体培地中の蛍光化合物の発色により抗酸菌を検出する方法。従来の固形培地による検出よりも感度が高いとされる。

試験結果概要

後期臨床第II相試験の結果、2カ月後のMGIT法による結核菌の陰性化率は、プラセボ群で、29.6%であったのに対し、「デラマニド」100mg(1日2回)の投与群で45.4%、「デラマニド」200mg(1日2回)の投与群で41.9%でした。プラセボ群に比較し、「デラマニド」を投与した両群で、陰性化率に統計学上の有意差が認められました(100mg:p=0.008、200mg:p=0.039)。
副次評価項目として評価された固形培地を用いた陰性化率においても、主要評価と同様の結果を示しました。これらの解析では、少なくとも5週連続で喀痰培養の結果が、陰性だった場合を陰性化の算出に含むと厳格に定義しています。
さらに、陰性化までの期間に関しては、プラセボ群では試験5週目の陰性化率が13%であったのに対し、「デラマニド」100mg、200mg投与群では、それぞれ24%、23%でした。治療期間が進むに従い、プラセボ群と比べ、「デラマニド」群での菌の陰性化が加速されていることが分かりました。
本試験の結果について、エストニアのタルフ大学病院の結核専門医で、本試験の治験統括医師を務めたマンフレッド・ダニロヴィッツ氏は、「現在の結核の治療方法は、長く煩わしいものになっています。それが治療の中断へとつながり、結果として再発や耐性菌の発生につながっています。本試験は、WHOのガイドラインに準拠した多剤耐性結核の標準治療に追加して投与された『デラマニド』が、短期間での菌の陰性化を達成し得ることを示すだけではなく、結核の感染力を下げ、多剤耐性結核の治療の選択肢を広げる可能性を示しています。」と述べています。

有害事象のプロファイルに関しては、標準治療に「デラマニド」100mgを上乗せした群、200mgを上乗せした群、プラセボを上乗せした群の3群間で、類似しており、1つ以上の有害事象を経験した患者さんは、それぞれ91.3%、94.4%、94.4%でした。
また、心電図検査でQTの延長が見られた患者さんは、「デラマニド」上乗せ群で多く報告され、標準治療に「デラマニド」100mgを上乗せした群、200mgを上乗せした群、プラセボを上乗せした群でそれぞれ10%、13%、4%でした(100mg群はp=0.048、200mg群はp=0.005)。なお、これらの患者さんのうち失神や不整脈といった臨床症状を示した患者さんはいませんでした。

多剤耐性結核について

結核は、感染力の高い、空気感染する感染症です。結核対策に対しては、多大な努力が行われていますが、依然として結核は公衆衛生上の大きな課題であり、過去20年の間には、これまでの第一選択薬が効果を示さない多剤耐性結核という新しい問題も生じています。薬剤の不足、品質、さらには服薬を途中で中断してしまうといった、結核の治療上の問題が、これらの耐性菌の出現に大きな影響を及ぼしています。多剤耐性結核は、毎年、約44万人の患者さんが発症し、15万人がこの疾患のために亡くなっていると推計されています。多剤耐性結核の86%は、世界の27カ国で起こっています。

会社概要

大塚製薬株式会社 (Otsuka Pharmaceutical Co., Ltd.)
設   立 : 1964年8月10日
資 本 金 : 200億円
代 表 者 : 代表取締役社長 岩本太郎 (いわもと たろう)
本社所在地 : 〒101-8535 東京都千代田区神田司町2丁目9番地
従 業 員 数 : 5,701名 (2012年3月31日現在)
事 業 内 容 : 医薬品・臨床検査・医療機器・食料品・化粧品の製造、製造販売、販売、輸出並びに輸入

連絡先
大塚製薬株式会社 広報部
TEL:03-6361-7379(直) FAX:03-6717-1479
URL:http://www.otsuka.co.jp/

パーマリンク:http://www.businesswire.com/news/home/20120606005641/ja